山王厳島神社園内の色付き始めたイチョウの葉の下には、細い白木でできた鳥居がある。池の真ん中には小さな社殿もある。厳島神社である。弁天様を祀る水の神様だ。ここも荏原の湧水池の一つである。 さっそく社殿に参ろうとすると、参道の途中には頑丈な鉄格子があり、社殿に近付くことすらできなくなっていた。コンクリートの土台を金網で囲った弁天島を、池の周囲から眺めるしかなかった。 社殿を取り囲む池には噴水があるものの、水は何となく淀んでいた。水中に生き物も見当たらず、小さな石の上にカメがいるだけであった。 仕方なく池の周囲を歩いてみると、裏手に花清水公園という別の公園があった。この一角はきれいに整備され、名の通り花もいろいろと植えられていた。敷地の一番奥に「御神水 弁天池源泉」と書かれた札が立てられている。そこには犬小屋のような覆屋にすっぽり納まった、小さな小さな祠が祀られていた。この祠のあるところから水が湧いているのだろう。祠に祀られているのも弁天様だと思われる。池にある弁天様の奥宮といったところだろうか。 祠からは小さな流路が続いている。水は一見淀んでいるように見えたが、段差のあるところに流れが確認でき、少しずつ水が湧き出ているようにも見えた。しかしわずかな水の量である。 池へ戻って周囲を見渡したが、この池からさらに流路が続いていそうにはなかった。だが、かつてはどこかへ流れ出ていたのではないかと思う。ここから南東方向には内川という流れがある。そこへ繋がっていたことも考えられる。そしてその流れはきっと、辺りの農地や生活を潤す大事な大事な水であったに違いない。また、今は厳重に囲まれ隔離されている弁天様も、その時代には人々の身近にあって厚く厚く信仰されていたのではないかと思う。
by ebara_explorer
| 2007-12-29 12:19
| 水辺
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