大井の水神社大森駅の東口から北へ向かうと、大井水神公園という公園がある。この公園は、大井町方面へ向かって、線路沿いに細長く連なっている。それが途切れたところに水神社という小さな社がある。 案内板によれば、ここには台地の末端から湧き出した地下水があったそうだ。その水は豊富で、かつて地域の人々が飲み水や農業用水に利用していたため、豊かな水の供給を願って神様が祀られた。それが九頭龍権現であるという。貞享二年(1685)に大井村の桜井伊兵衛・大野忠左衛門が願主となって祀ったのが最初だそうだ。その後、明治時代までは日照りになると村人がここへ集まって雨乞いをしていたと伝えられている。また、歯痛を止めるご利益もあったということだ。 水辺の神といえば、今まで荏原で見てきたのはいずれも弁天様であったが、ここの神様は九頭龍権現というそうだ。初めて聞く名前である。九頭龍といえば、福井の九頭竜川がすぐに思い浮かぶが、何か関係があるのだろうか。 こんもりとした木々に覆われた境内はひんやりとしていた。その真ん中には、水神の池と呼ばれる池がある。品川百景にも選ばれているそうである。池には鯉が泳いでいた。この池と、近くの手水鉢には滔々と水が流れ出ていたが、ここで水が湧き出ていたのは昭和五十年代までのことだそうだから、今は自然の湧水ではないようだ。 境内に本殿を探してみると、隅の方に小さな祠があった。岩をくりぬいた中にすっぽりと納まっている。 また、となりの岩山のてっぺんには「九頭龍大権現」と書かれた石碑が建っていた。その他にも周囲の岩場には石碑の痕跡らしきものがいくつか見られ、信仰の深さを窺わせるものであった。 荏原の中では、ちょっと変わった水辺の信仰であった。
by ebara_explorer
| 2008-12-05 19:27
| 水辺
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