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品川神社富士塚

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 京浜急行新馬場駅前にある品川神社は、鎌倉時代初めの文治三年(1187)に源頼朝が安房国洲崎大明神を勧請したものと伝える、由緒ある社である。

 この神社で注目すべき点は、富士塚が昔のままの形で残っているということである。富士塚とは、富士信仰において富士山を遥拝するためのミニチュアの富士山のことで、ここ品川神社の富士塚は、明治二年(1869)に北品川の丸嘉講約三百人によって造られた後、大正十一年(1922)に第一京浜国道の建設のため一部が削られて石垣となってしまっているが、江戸時代からの富士信仰の形をそのまま伝えるものであろう。これは荏原の中でも珍しいことだ。

 富士塚の入口は、本殿へ続く石段の途中にある。
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 鳥居をくぐると「登山道」と書かれた石段が続く。石段の脇には「一合目」「二合目」「三合目」という石柱が建っている。富士塚という「山」に上って行く気分だ。
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 やがて右手に、石積みの塚の全貌が現れてくる。積み上げられた石の一つ一つから、富士信仰に対する想いが伝わってくる。石積みの中には富士講碑がいくつも建っていて、奉納した人々の名前が刻まれている。富士講はいくつもあったのだろうか。
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 途中の「五合目」と書かれたところから、石段が急で狭くなってくる。そこを慎重に上って行くと、富士塚の頂上に出る。頂上は2、3メートル四方あって、けっこう広い。ここからの眺めはなかなかである。
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 ただ、富士山の見えるべき西方は、木立とビルに視界を遮られ、見通しが悪かった。かつてはきっと富士山がきれいに望めたことであろう。富士塚から富士山を遥拝してみたかったものである。

 初めて富士塚に上ってみたが、富士信仰への想いがひしひしと伝わってくる史跡であった。こんな塚が、かつては荏原のあちこちにあったのかと思うと、面白く感じられた。

 この品川神社の富士塚では、現在も丸嘉講が毎年七月一日前後に「山開き行事」を行っているという。塚のふもとの浅間神社に、行衣という白装束で集まり、富士塚に登山して遥拝を行うそうだ。そういう意味では、今でも生きた「富士塚」として、貴重な史跡であると言える。



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by ebara_explorer | 2009-02-22 18:37 | 富士信仰
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