2008年 11月 19日 ( 1 )

品川歴史館特別展

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 品川歴史館で開催されている特別展「東京湾と品川-よみがえる中世の港町-」に行って来た。この特別展は、江戸時代の宿場町になる前の品川の様子を、港町という観点から辿るものである。

 まず第一会場では、品川の地理的な概観がわかるようになっていた。床に大きな地図が掲げられ、東京湾を取り囲む中世当時の湊が示されている。六浦・神奈川・浅草寺隅田川河口・市川・船橋・木更津・古戸・百首・館山といった場所との連携が窺える。そして、品川は湾のずいぶん奥まったところに位置していることがわかる。

 次の第二会場では、港町としての品川の歴史が編年で展示されていた。品川は室町時代にすでに太平洋海運の港湾都市に発展していたが、その湊の起源は、古代武蔵国府の時代に端を発するという。品川は武蔵国の国府津もしくは荏原郡の郡津であったと考えられている。そして、その時代に武蔵国府のあった府中と品川の密接な関係が窺われる。すなわち、多摩川による水運と、陸路の品川道である。調布市では古代品川道の道路遺構が見つかっており、そこでは中世の工房跡と想定される遺構も合わせて確認されているという。この品川道は、千束・雪ヶ谷・等々力・喜多見と荏原の真ん中を東西に横切る形で推定されていた。ひじょうに興味深い道筋である。また、品川と府中の関係は、府中大国魂神社に伝わる「浜下り」という行事が品川の海で行われるところからも辿れるという。この行事は源頼義・義家の奥州征討の際に始まったものとされている。

 中世になると品川は、多摩川の流域に土着した大井一族のうち、大井氏・品河氏に支配されるようになったという。鎌倉初期の『曽我物語』や『千葉妙見大縁起絵巻』には「品川宿」の名が見えるが、この宿は大井氏・品河氏の居館を中心とした交通・軍事の要所に設けられたものと考えられている。ちなみに、大井氏は多摩川左岸から立会川流域の大井郷、品河氏は目黒川下流域の品河郷を本貫地としたそうだ。

 さらに室町時代になると、港町としての品川の様子がはっきりとわかる史料が出てくる。金沢称名寺に伝わる明徳三年(1392)の『湊船帳』である。これは品川に入津した船の台帳と考えられていて、伊勢方面からの船が出入りしていたこともわかる。ただし、この『湊船帳』をめぐっては、品川を船籍地とする船の台帳とする見方や、品川入津の帆別銭免除の神船を記載したものだとする見方もあるそうだ。帆別銭というのは入港税のことであり、鎌倉府の下で称名寺や鎌倉の寺院の修造に使われたそうだ。これについては別に『帆別銭納帳』という史料もある。

 伊勢方面との関係を示すものとしては、遺跡からの出土品もある。この歴史館がある辺りの大井鹿島遺跡では、南伊勢系土器が出土しているそうだ。また、品川には常滑焼の大甕が伝わっている。これはロビーに展示されていたが、実に大きな甕である。

 こうした湊としての活動に伴い、室町時代の品川は町としても発展していく様子が展示では描かれていく。当時は、禅宗寺院や浄土・浄土真宗の寺院、日蓮宗の寺院が創建され、また時衆の活動もあった。今に残る妙国寺や法禅寺など品川の有名な寺ができたのもこのときである。

 また、都市としての品川の縁辺部にあたる御殿山には霊場ができる。中世において葬送と供養の行われていた御殿山からは大量の板碑や五輪塔・宝篋印塔が出土している。幕末の台場築造のときに見つかったものだ。これらは法禅寺に保管されていて普段は見ることができないが、今回は特別にいくつかがロビーに展示されていた。薄い板碑はさすがに割れているものが多かったが、五輪塔や宝篋印塔はほぼ原型のまま残っていて驚かされる。中世の祈りがひしひしと伝わってくるものだ。出土した板碑には、多摩川下流域に見られる蝶型蓮座板碑と東京湾北寄りに見られる浅草寺型蓮座板碑の両方があるそうで、また宝篋印塔には北関東の特徴を有する部材が含まれているということで、品川における多様な文化の交流が窺えるものであった。

 それからこの時代になると、在地領主品河氏が没落し、代わって問などの商人の活躍から有徳人が誕生するようになる。品川で有名な有徳人としては鈴木氏や榎本氏などがいるそうだ。鈴木氏は妙国寺の壇越となり、また文化人としての活動も残しているという。

 さらに時代が下ると、宇田川氏や鳥海氏などの町衆の活躍が目立つようになる。そして、戦国時代の後北条氏による支配の頃には、町衆が自立した都市機能を確立していたという。それが江戸時代の宿場町としての発展へとつながっていくことになる。

 展示全体からは、品川が港町として多方面とつながりを持っていた様子が立体的に読み取れた。そして、品川にも中世の痕跡が多く残っていることを知ることができた。これから荏原の歴史探訪として、品川を訪れるのが楽しみになってきた。また今回は、久しぶりに自分の好きな中世を中心とした歴史に深く触れることができて、この上ない歓びであった。



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by ebara_explorer | 2008-11-19 19:35 | その他