八幡宮めぐり

 さっそく荏原の史跡巡りに出かけようと、まずは地図を眺めた。寝転がって地図帳を見たり、インターネットのスクロール地図上で荏原を行ったり来たりした。地図上で史跡を探すときは、寺や神社のマークに目をつける。目黒・世田谷・大田・品川という見慣れた地域の地図だが、改めて眺めてみると、寺社が数多くある。
 そんな中、目に付いたのが八幡神社である。荏原には八幡神社が実に多い。もっともこれは荏原に限ったことではなく、全国的な傾向と言えるだろう。

 八幡神社の総本家は大分の宇佐八幡宮である。この神様が日本中に勧請され、全国のあちこちに八幡神社が存在する。有名なところでは、京都の石清水八幡宮、鎌倉の鶴岡八幡宮などが挙げられる。すべての神社の中で八幡神社の数は、稲荷神社に次いで二番目に多いとも言われている。
 八幡神社が勧請された理由としては、大きく次の二つが挙げられるのではないかと思う。一つは宇佐八幡宮や石清水八幡宮の荘園となった地に、領主である八幡社が分祀され、その荘園の支配および信仰の中心となったというものである。もう一つは、武家の信仰に基づくものである。八幡神は源氏の氏神とされており、源氏の厚い信仰があった上、武家の守護神としても鎌倉時代以降、全国に信仰が広まり、八幡神社が各地に勧請された。

 そういうわけで、荏原にも八幡神社が多いわけであるが、これはやはり注目に値する。どのくらいあるのかと数えてみると、わかる範囲で目黒・世田谷・大田・品川の四区内に三十の八幡神社が見つかった。
 私はそれらのすべてを訪れてみたくなった。そしてその由緒を調べて、八幡信仰の広がりというものを改めて確かめてみたいと思った。早くも大きなテーマができた。いざ、八幡めぐりの旅に出陣である。
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(写真は春の碑文谷八幡宮参道)

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# by ebara_explorer | 2007-05-29 20:00 | 八幡宮めぐり

歴史を求める新たな旅の始まり

 歴史が好きだ。特に日本の中世史が好きだ。大学では日本中世史を専攻し、卒業してからも、暇を見ては中世史に関わる史跡を巡る旅に出かけてきた。史跡を訪れることが、歴史に触れる最良の方法だからである。たとえ今は何もない野原であったとしても、史跡の地に立てば中世に触れることができる。はるか昔に近づくことができる気がするものである。特に史跡についての知識があればあるほど、その想いは強くなる。

 中世の史跡は日本各地にある。お寺や神社であったり、城の跡であったり遺跡であったり、石仏であったり石塔であったりする。だが私はいつも、遠くにある中世の史跡を求めていた。その地へ旅立つことを夢見て日常を生きていた。

 そして、実際に旅立つことができるときにはこの上ない歓びがあった。列車に乗り、バスに乗り換え、自分の足で歩いて、土地の人に道を聞いて、最後はあえぎながら坂を上って史跡にたどり着く。そのときの歓びは何にも代えがたいものであった。例えどんなに小さな石塔が一つポツンとあるだけだったとしても、中世に触れられたという満足感があった。胸がいっぱいになった。そこで何百年も昔に想いを馳せ、いろいろと考察する。それが楽しかった。そうやって私は、日本各地を旅してきた。

 しかし、年を経るごとに、そうした中世を求める旅に出る機会が少なくなってきた。次第に多忙な日常へ縛られるようになっていったからである。実際に旅をすることはもちろん、旅のために知識を深める余裕もなくなってきた。それでも、歴史には憧れる。中世に触れていたいと思ってきた。

 そんな折、ふと足許に目を転じた。私が生まれてこのかた住んできた地である。東京都目黒区だ。ここも日本である。都会の只中ではあるが、この地にも、脈々と刻まれてきた歴史がある。中世史もある。そんな歴史に触れてみるのはどうだろうか。史跡まで、家から歩いて行ける。自転車で行ける。余裕の少ない生活の中ではぴったりの史跡巡りである。また、都会の中で意外な発見があるかもしれない。

 そういう想いから私はここに、新たな歴史を求める旅へ出ることとした。そしてその旅の記録を重ねていこうと思い立った。題して「東京荏原歴史物語資料館」である。荏原とは、東京都目黒区を含む地域の旧郡名である。旅の対象を目黒区に限らず、その周辺も含めたいという考えからこの名前とした。また、時代の対象も中世を中心としながら、幅広く捉えていきたいと考えている。

 さて、旅立ちにあたり、対象の地域を概観しておきたい。荏原郡はかつての武蔵国の一郡であり、現在の東京23区の中では南西部にあたる。おおよそ品川区・目黒区・大田区・世田谷区がその範囲に含まれる。地形的には武蔵野台地の東端に位置し、いくつもの川が谷筋を作る起伏の激しい地域である。

 この荏原にある谷底の一つで生まれ育ち、今も住み暮らしているのが私である。その地元の歴史を見直すべく、また身近な史跡に触れるべく、いざ旅立ちたい。日常の中でどのくらい旅の記録を重ねていけるかわからないが、このブログを続けていきたいと思う。そして何よりも、歴史に触れる旅を楽しみたい。
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(写真は荏原を流れる呑川の春)

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# by ebara_explorer | 2007-05-26 10:00 | 序章